- 2017.1.27
- 星空観察会
宇宙の果て@国民宿舎小豆島星空案内人
小学生の頃、学校からの帰り道に、よく宇宙の果てはどうなっているんだろうと考えたものでした。あれからウン十年(笑)、天文学も物理学も飛躍的に発展しましたが、未だ宇宙の果てがどうなっているか結論は出ていません。古代ギリシアの哲学者は、「宇宙の果てがあったとして、そこから杖を伸ばせばそこが宇宙の果てになる。そこからまたその先に杖を伸ばせばそこが宇宙の果てになる。だから宇宙に果てなどありはしない」と考えて、それが正しいとされて約2千年が過ぎました。
現代の宇宙論学者がどう考えているかというと、これはもういろいろで、宇宙は12面体のサッカーボールのような形をしていると考える人もいれば、この宇宙のどこかのはるか先には若い銀河系の姿が見えるはずだと探している人もいます。結局のところ宇宙が曲がっているか、穴が開いているかどうかということですが、総じて少し前までは宇宙有限論が主流で、最近はまた無限論が勢いを増しているということのように思えます。現時点での結論としては宇宙は無限か、無限といってもいいほど十分に大きいということでしょうか。
ここ20年くらいは並行宇宙の存在が真剣に研究されるようになり、宇宙の果てはさらに遠くなりました。ある宇宙論学者はレベル1からレベル4までの並行宇宙を論じています。ものすごく簡単にいうと、レベル1は約420億光年先の宇宙の地平線のさらに先にも、初期の物質分布は異なっても物理法則を同じくする様々な宇宙があり、はるか先にはもう一人の自分がいるという考え方です。レベル2はインフレーション理論から発展した、この宇宙とは隔絶されて物質や物理法則まで異なった無数の並行宇宙があるという考え方です。レベル3は、起こりえないこと以外はすべてどこかで実現するという、量子力学の多世界解釈という理論から発展した、泡のように宇宙が無数に分岐しているという考え方です。レベル4ともなると、この宇宙はすべて数理的構造であるというもので、もう何でもありの世界になります(笑)。
一ついえるのは、この宇宙の物理法則が人類にとってあまりにも都合が良過ぎるということです。例えば、もしビッグバン直後の陽子の重さが今より0.2%だけ重ければ、すぐに中性子に崩壊してしまい原子ができないので、人類も生まれなかったはずだというのです。こうした例は枚挙にいとまがなく、この理由で最も合理的なのは、十分な数の宇宙があり、たまたま今の宇宙がそんな宇宙だったので人類が生まれ、宇宙について考え始めたからだという考え方で、人間原理とも呼ばれますが、文系頭でもこれには納得です。ということで、やっぱり並行宇宙はあるのかなあと思いつつ、あまりにも大きな宇宙と、はるか彼方のもう一人の自分に思いをはせながら、星空を眺めるのも星空観察会の楽しみの一つです。
なお、国民宿舎小豆島の星空観察会は、興味のある方ならどなたでも参加いただけます。開催時間は直前になりますが国民宿舎小豆島のツイッターやフェイスブックでお知らせしていますので、確認の上、国民宿舎小豆島本館屋上まで直接お越しください。
(写真は上からNGC4565、NGC6946、M106、M64)